最初から気付いていた
たぶん僕は探していたんだと思う、僕が笑顔になるための誰かの笑顔。
たまたま目に君が目に映ったのは、きっとたまたまじゃなくて泣きそうに笑っていたからだと思う。
ある日女子トイレから君が出てきて手を洗う。
君の腕まくりのそこにはまだ新しい傷跡。
無数の傷跡。
僕は彼女のことを想う。
陰りを見せる流し目にいつか近づいてやろうって考えていた。
ある日バスが一緒になって勇気をだして声をかける。するとさ、君は結構おどけて笑うんだって知ったんだ。
そして彼女は言う。笑ってなきゃいけないんだって。そんなバカなことってあるもんかい?
「笑顔は笑顔を呼び込むの。泣いてたら前なんて見れないじゃない」
実際そんな上手く彼女は笑っていないんだけれどその言葉は美しいと思った。
僕なんて笑い方なんて忘れちまうほどもう何ヶ月も笑っちゃいないっていうのにさ。
僕は太陽をさがしていたわけじゃなかったんだな、君の心からの笑顔をいつか僕の笑顔で引き出すことが出来たならそれこそ冥利に尽きるってもんだ。
もう終わる、僕らは春にあまり思い残しのないこの学校を去る。
悲しきことは、そうだな強いていえば君がいなくなるから僕が笑えなくなること。
だから最後に告白をした。「君の笑顔が見たい。」